お客様の声
共同開発『作業船運航管理システムWIT-MVS』誕生まで
若築建設株式会社 様
港湾土木会社として長い歴史を持ち、日本経済の発展とともに、工業用地等の埋立事業や港湾整備事業を通して、業容を全国的に拡大し続けている若築建設株式会社様(以下敬称略)。常に提案型の姿勢で新たな工事受注を進める若築建設に、海上工事の現状と、弊社との共同開発により生まれた作業船運航管理システム『WIT-MVS』構築に至った経緯を伺いました。
- 建設業向け
目次
海上工事のこれまで
我々建設会社が行う海上工事の海域においては、さまざまな船舶が仕事を行っており、危険物を運搬する商用ケミカル船、タンカー船、客船、そして小型漁船等々が縦横に動き回っています。また、工事海域付近には、魚場や養殖場、本港航路、空港の進入規制区域などが存在することも多々あります。
このため、工事作業船は、さまざまな規制を守りつつ、海域を行き交う一般船舶に支障を与えることなく仕事を進めなければなりません。
実際、WIT-MVSを最初に使用した場所は、日本で一番船舶が行き交う東京湾内での工事でした。一旦、事故を起こしてしまえば社会的な責任は工事請負会社のみに止まらず、発注者である施主側にも多大な迷惑をかけ、その損害は計りしれません。事故を未然に防ぎ、与えられた仕事を完成させることが我々建設会社の責務です。「一に安全、二に安全」です。
同報性・速報性・情報の共有化 を求めていた
また、主要な港では、つねに複数の会社が工事を行っている状態となります。このため、参加企業間で自主的に協議会組織をつくり、他の関係機関との調整をはかることが多くなります。たとえば、地方自治体の港湾管理者、岸壁ユーザーである物流会社、そして、漁業組合などが含まれます。これまでは、工事の情報をリーフレットやFAX等で知らせていましたが、作業船の動向や作業状態をリアルタイムに情報発信することは困難でした。必要としたのは「同報性」「速報性」そして「情報の共有化」。これを満足させるツールを待ち望んでいました。
導入コストと情報開示の難しさ
さまざまな規制を守りつつ、海域の航行安全を守るためには、工事作業船の運航管理をしっかりと行うことが有効であることを我々は経験的に知っています。そのため弊社では、工事用作業船に対してD-GPSを艤装して工事作業船の運航管理を行っていました。ただし、この方法には大きな問題点がありました。
それは、工事作業船の数が多くなればなるほど、導入コストが大きくなり、導入しにくくなるということ。そして、工事関係者以外に対しての情報開示がむずかしく、キーワードの一つである『情報の共有化』の観点が欠如しているという点です。我々が求めたものは、情報を共有化することで地域貢献まで実現でき、なおかつシステム導入や管理が容易で皆に使ってもらえるシステムにすることでした。
着想を得たのは工事車両運行管理システム
そこで思い立ったのが、データセンターの運用、ASP上の各種アプリケーション開発、そして、携帯電話アプリケーションソフト開発などの分野で経験豊富なアカサカテック(AKT)さんへの相談です。
アカサカテック(AKT)さんでは、以前よりGPS携帯電話とASPを組み合わせた『VasMap」を製品化しており、多くのゼネコンさんで使用され、使用者から高い評価を得ていることを知っていました。
VasMapは、ダンプなどの陸上作業車両の管理を行うシステムですが、GPS携帯電話を使用することでシステム導入や管理の容易性を実現しています。アカサカテックさんが持つこのASP開発のノウハウと我々が持つ海上で安全性を向上させるためのノウハウを融合させれば、すべてを満足できるシステムを構築できると思い、共同開発を提案しました。
なお進化を続けるWIT-MVS
WIT-MVSは、東洋信号通信社が収集した一般船舶のAISデータと工事用作業船舶のリアルタイムの位置情報を一緒に地図上に表示でき、『同報性』と『速報性』を実現しました。そして、何のソフトも介さず、誰でも一般船舶と工事用作業船の情報閲覧が可能になり、『情報の共有化』をはかることに成功しました。
すでに10件以上の工事で採用され、各現場から安全性を高めるためのアイデアが続々と生まれてきています。各船舶の未来予測位置表示による出会い事故防止機能や、船舶接近時の警報機能、Webカメラとの連動によるAIS非搭載船舶の自動検知など、今もなお進化を続けています。
導入の効果
・安全確保の点でも事前に出入港船舶の通過時間がリアルタイムで把握でき、安全確保の為の工事スケジュールも組みやすくなった。
・現在の作業状態が容易に判明するため、工事用船舶が輻輳する場合の調整が的確になった。
・夜間航行が必要な場合に、目視できない一般船舶の動向をいち早くとらえることが可能となり、安全性が向上した。
・海上工事は、3~6ヶ月の短期間の工事から始まり、長い工事でも1~2年間。そして、共同企業体(JV)での受注が多い現状では、設備物件の償却も難しく、設備を買い取る事はできなくなった。その点ASP運用であれば、パソコンとインターネットがあれば他の設備は不要であり、コストセービングができた。
・運航履歴を残すことができ、各種規制下での運航状況を検証できるようになった。
今後の展望
・モバイル通信料金が安く、通信スピードがより速くなれば、現在コマ送りで現場モニターしている画像を、よりなめらかに動画配信できるのではないかと期待している。
・現時点では、海上保安庁のENC(航海用電子海図 Electronic Navigational Chart)をASPで配信することは許されていないが、今後、これが可能になれば深線コンタ図なども閲覧ができるようになり、長距離の回航などに効果を発揮すると期待している。
・作業船に搭載している情報端末は、現在KDDI社が販売するGPS携帯電話を使用している。価格も安く手ごろであるメリットはあるが、GPS搭載型モバイルPCとの連動を視野に入れている。
・ケースに応じて、測位精度の高いGPSとの切り替えや、船舶速力などが送れる端末と連動させたい。
この度は、貴重なお話をありがとうございました。若葉建設株式会社様の期待に応えられるよう、これからも更なる営業努力を進めて参りたいと思います。
今回導入された製品
製品紹介
WIT-MVSは、港湾工事において、AIS を搭載した一般船舶と工事用作業船の航行状況をインターネット上でリアルタイムに監視するシステムです。工事用船舶とAIS 船接近時には、音により警報を発令するため、システム画面を注視することなく工事用船舶に対して注意喚起を行えます。施工管理支援機能として、作業開始や作業終了の報告、航行開始や帰港終了などの任意の報告等を記録できます。