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基礎知識

【ICT】ローカライゼーションとは?

意味や測量における重要性を解説

土地の情報を収集するにあたって欠かせない『測量』に、『ローカライゼーション』と呼ばれる作業があります。建設業界ではより働きやすい環境作りを進めるため、さまざまな施策の実施や改革が行われていますが、ローカライゼーションはそれら施策に大きく関わる重要な作業です。では、このローカライゼーションとはいったい何でしょうか。

本記事では、ローカライゼーションの意味や役割、実施する際の流れなどをご紹介します。

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ローカライゼーションとは


       
国土交通省が進めている i-Construction(アイ・コンストラクション)。i-Constructionとは建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組みです。2015年12月より、この取り組みをもって、人口減少社会における労働者不足や、3K(きつい・危険・汚い)ともいわれる建設業界のイメージ改革に注力しています。
 
i-Constructionの主要な施策の1つにICT(Information and Communication Technology:情報通信技術) を活用したICT施工があります。ここでは、ICT施工において重要な作業工程であり、施工の精度を左右する『ローカライゼーション』について説明します。
  
 

ローカライゼーションの意味

  
ローカライゼーション(localization)とは、直訳すると「所在、局在化、限局化」などの意味があります。つまり、「限られた場所に存在すること」といった意味です。
  
建設現場におけるローカライゼーションの意味としては、「現地座標に変換すること」をいいます。具体的には、GNSS(全球測位衛星システム)の計測座標を現場の座標に変換します。
  
つまり、GNSSの計測結果を、限られた場所(工事現場)に合うように平面直角座標に存在させる(変換させる)という作業が「ローカライゼーション」となります。
   
    

ローカライゼーションの役割と重要性

   
では、なぜローカライゼーションが必要になるのでしょうか。
 
通常、工事では「工事基準点」と呼ばれるものが設けられています。これらは平面直角座標系で表され、X軸、Y軸、Z(標高)軸の要素を持ちます。一方、GNSSで取得する観測データは緯度、経度、楕円体高の要素となります。工事で使われる座標はすべて平面直角座標で表されているので、位置の表現に差異が生じてしまうのです。
 
ICT施工において、高精度で施工を行うためには、この差異を無くす作業が重要となります。そのため、GNSSの計測座標を平面直角座標に変換する際の作業精度は、非常に高いものが求められます。
 
ローカライゼーションは施工の初めに行われますが、この作業がICT施工にとって、施工精度を左右する非常に重要な役割を担っているのです。

ローカライゼーションの流れ


  
ここでは、実際にローカライゼーションを行う際の流れを手順に沿って解説していきます。
  
今回はいくつかあるGNSS測位の中でもICT施工で一般的な、「RTK-GNSS」の流れを解説します。RTK-GNSSには、リアルタイムに位置情報を取得でき、誤差数cm以下の高精度を確保できるという特徴があります。
   
  
1.基準局の設置
2.基準点の計測
3.現地座標への変換
  
  

1.基準局の設置

  
建設現場には必ず「基準局」を設ける必要があります。
 
RTK-GNSSでは、位置が分かっている基準局(固定局)と、新しく位置を求めようとする観測点(移動局)のGNSS観測を同時に行うことによって観測点の位置を決定します。リアルタイムに送信解析をすることで短時間での測量を可能にしているのです。
 
実際の施工中では、基準局があることによりICT建機に搭載した受信機で位置情報の計測ができるため、移動する建機でもマシンコントロールやガイダンスを受けることができます。
  
    

2.基準点の計測

   
次はRTK-GNSSの移動局側で、工事現場内の基準点を計測します。
基準点は、高さも含めた3次元座標で計測し、対象範囲を囲みながら最低でも4点、通常5~7点程度は観測するようにします。
  
基準点内に囲まれた範囲にしかローカライゼーションできないため、必ずICT施工の対象範囲をすべて囲まなければなりません。精度も重要になるため、観測精度の高い状態で行う必要があります。
  
  

3.現地座標への変換

   
観測した基準点座標データと観測データを使い、座標変換値を作成します。工事基準点の平面直角座標とGNSSで計測した測量成果の座標との誤差を、平均的に局在化します。
 
施工の前に座標変換値を設定しておくことで、基準点内のGNSS計測値であれば、即座に変換して現地座標を得られるようになります。

ローカライゼーションにおける注意点


   
ローカライゼーションを行うに当たって、気を付けるべきことがいくつかあります。
ここでは、主な注意点を4つご紹介します。
  
  
● 上空視界が確保されていること
ローカライゼーションにおいては衛星からの電波を受信する必要があります。トンネル内や、高架下などでは電波を受信できません。山間部の現場で樹木が邪魔をしたり、大きな建物が隣接していたりする場合も受信できない可能性があるので注意しましょう。
  
● 金属製のものが近くにないこと
工事現場にあるような敷鉄板や鋼矢板など、金属製のものは電波を反射します。反射した電波を受信するマルチパスという現象が起こると観測精度に支障をきたすため、注意が必要です。
  
● 電波塔などが近くにないこと
強い電波を発するものが近くにあると電波障害を引き起こすため、あらかじめ確認しておきましょう。
  
● 雨や雪の場合は観測可能
見通しは必要ないため、天候の影響を受けにくいという特徴があります。雨や雪が観測を妨げることは、基本的にありません。

まとめ


   
ローカライゼーションは、GNSSにより得られた衛星座標を、現場の平面直角座標へ置き換えるための作業です。高精度なICT施工を実現するためにはローカライゼーションにより得られる座標変換値が必要不可欠です。
  
GNSS測位にはいくつか制限や注意点はありますが、ICT施工、ローカライゼーションの活用により、丁張りなしで数センチ誤差の範囲内で施工することが可能となり、効率化、省人力化が期待できます。今後ますます導入されていくICT施工において、施工精度確保のためにもローカライゼーションは非常に重要な役割を担っているのです。
  
最新のテクノロジーを導入し、建設現場における精度の高い作業と働きやすさの両立を図ってみてはいかがでしょうか。
  
   

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