AKT | アカサカテック|GPS/GNSSを活用した船舶・建設・情報化施工システム

BLOG

トレンド

国土交通省が推進するインフラDXとは?アクションプランや取り組み事例を紹介

様々な業界で用いられているDX(デジタルフォーメーション)という言葉。土木建設業界においてもDXの普及が進んでおり、令和2年度には国土交通省が『インフラ分野のDX』を掲げ、DX推進本部を立ち上げました。
  
『インフラ分野のDX』とはどのような概念なのでしょうか。この記事では、インフラDXについて実際の取り組み事例を踏まえながら解説します。

  • 建設業向け
  • メーカー向け
  • インフラ保全業向け

国交省が推進するインフラDXとは

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を活用することで、業務や企業文化、組織そのものを変革し、新たな価値創出など自社の競争力を高めることを意味します。ただ単にデジタル化することによる作業効率の向上のみならず、激化するビジネス環境において勝ち残るための取り組みともいえます。
  
インフラDXは、社会基盤を支える社会資本や公共サービスにデジタル技術を活用し、建設や国土交通省などの在り方や働き方の改革することで、国民の安全で安心できる豊かな生活も実現を目指します。
  
具体的には、インフラのDXによって以下のようなことが想定されています。
  
・ 行政手続き、暮らしにおけるサービスの変革
・ ロボット、AI等を活用した安全性確保、効率性の向上
・ デジタルデータを活用した働き方変革

  
インフラDXは、行政手続きが便利になるといった国民向けのサービスだけでなく、建設業界における変革も含まれています。
 
 

インフラ分野のDXが推進される背景

  
インフラ分野でDXが推進されている背景には、以下のような理由があります。
  
【インフラDX推進の背景】
  
・ データやデジタル技術の普及、拡大
・ 大量データ(ビッグデータ)の集積
・ 機械学習、人工知能の急成長、急発展
・ 通信環境の整備
・ コロナ禍による働き方の変化
  
これまでもデジタル技術は様々な分野に用いられていましたが、コロナ禍を通じて急激に社会のデジタル化が進展しました。在宅ワークやリモート会議など働きかたの多様化とともに様々なサービスが普及し、社会全体としてビジネスの在りかたを見直すきっかけとなりました。
  
このような背景のなか、土木建設現場を含むインフラ分野では、労働力不足・度重なる災害への対策・既存インフラの老朽化など、一筋縄にはいかない問題が山積しており、課題解決の一つのアプローチとして、官民一体となってインフラDXを進めています。
  
  

インフラDX推進の取り組みの目的

  
インフラDXを推進することで、どのような変化が起こるのでしょうか。インフラDX推進には以下のような目的があります。
  
【インフラDX推進の目的】
  
・ インフラの利用、サービスの向上
・ インフラの整備、管理等の高度化
  
これまで土木建設業界においては、i-Constructionという、デジタル技術の積極的な活用を推進する取り組みにより、作業の効率化や生産性の向上を進めてきました。
   

BLOG:令和4年度 i-Constructionに関する工種類拡大の内容を解説!

  
インフラDXにおいては、従来のi-Constructionの枠組みを軸としながら、よりブラッシュアップしたデジタル技術の活用を推進します。
  
インフラサービスの向上だけでなく、システムやソフトウェアなどの他業界と連携しながら、新たなインフラ関連産業として発展させることを目的としています。
  
これまでになかった新しいインフラサービスを提供することで、国民の暮らしをより豊かにすることが、インフラDX推進の大きな目的です。
 
  

インフラDX推進における課題

  
規模の大きいインフラDXには、以下のような課題があります。
  
【インフラDXの課題】
  
・ インフラDXに対応できる人材の育成
・ インフラデータの活用に向けたシステムの整備
・ 新技術実装の促進
    
インフラDXにおいてデジタル機器を取り入れる場合、デジタル機器を扱える、さらにはデータを活用できる人材の育成が必要不可欠です。機器だけを導入しても業務に反映できなければDX化のメリットを得ることはできません。
  
こうした課題に対し、国土交通省では、DX化に向けた研修プログラムや導入促進資料の作成、オンラインで受講できるウェビナーや講習会などの実施を検討しています。
  
また、工程単体での作業効率化がDXの目的ではないため、他工程と連携をとりながらデータを分析し、全体を通して最適化するためのシステム構築が必要となります。

インフラDXのアクションプラン三分野


 
国交省が掲げるインフラDXのアクションプランは、第1版では『行政手続きのデジタル化』『情報の高度化とその活用』『現場作業の遠隔化・自動化・自律化』としていましたが、第2版では以下の三分野に分けられています。
  
【インフラDXのアクションプラン】
   
・ 「インフラの作り方」の変革
・ 「インフラの使い方」の変革
・ 「データの活かし方」の変革
  
上記のインフラDXのアクションプランでは、業界内外さらには大学や研究機関などが連携して、組織を超えて横断的に取り組む必要があるとしています。
 
 

「インフラの作り方」の変革

 
インフラの作り方の変革では、生産性の向上・安全性の向上・手続などの効率化を実現することを目的としています。
   
・ 自動建設機械による施工(ICT施工)
・ 公共工事にかかるシステムの手続きや書類のデジタル化
・ 土木工事積算システムの導入など

   
現場に縛られずに、現場管理ができるような体制を整える必要があります。
 

BLOG:ICT施工ステージ2の取り組み内容をわかりやすく解説

 
 

「インフラの使い方」の変革

 
インフラの使い方の変革では、利用者目線からインフラの機能を最大限に引き出し、持続可能でありながら安全で安心できるインフラ管理・運用の実現を目的としています。
  
・ 自動化、効率化によるサービス提供
・ VRなどを用いた検査支援

 
 

「データの活かし方」の変革

  
データの活かし方の変革では、仕事の進め方・民間投資・技術開発が促進される社会の実現を目的としています。
  
・ データ連携による情報提供推進
・ データ提供の高速化
・ 国土交通省データプラットフォームでのデータ公開

   
『国土交通データプラットフォーム』を中心として、国土のデジタルツイン化を進めることで、データをわかりやすく、使いやすく提供することが可能です。これにより、インフラ分野において必要なデータを漏れなく徹底的に活かせるようになると期待されています。

インフラDXの代表的な取り組み事例


 
国土交通省の具体的なインフラDXの取り組み事例をいくつか見ていきましょう。
 
【インフラDXの取り組み事例】
 
・ 組織横断的なDX推進体制の強化
・ 多様な業界でのインフラDXの推進
・ 各種データプラットフォームの活用
・ 3Dデータ・デジタル空間の活用
・ インフラDXによる災害対応
 
 

組織横断的なDX推進体制の強化

  
インフラDXにおいては、建設業界だけでなく、その他の業界や大学などの研究機関が組織を超えて連携することが不可欠です。そこで、国土交通省では、組織を横断した体制を構築することを目的として、以下のような取り組みを進めています。
 
【取り組み事例】
 
・ 大臣官房参事官(イノベーション)グループの誕生
・ 各地方整備局等にインフラDX推進本部を設置
・ 各地方整備局等にDX専属の組織を配置
・ 働き方を改善し現場の最善線を担う出張所の設置
  
様々な関係施設にインフラDXに特化した部門を設置するなどし、各機関が横断的に協力できる窓口を設置しています。
 
 

多様な業界でのインフラDXの推進

  
一見無関係に思える業界同士が連携することで、インフラDX化への新たな糸口がみつかる可能性があります。こうした多様な業界同士が繋がりやすい環境整備においても、積極的に取り組んでいるのが現状です。
  
【取り組み事例】
 
・ インフラDX対象に「スタートアップ奨励賞」を追加
・ 各自治体でインフラの維持管理、防災対策などにデジタルツインの活用
・ インフラデータチャレンジ(ユースケース開発)
・ 最新のデジタル建設現場の体験施設の開設
・ インフラDX人材育成センターの整備
  
政府や企業だけでなく、国民も一丸となってインフラDXへの理解を深められるよう、社会全体がインフラDXへの取り組みに積極的に参加できるような取り組みを行っています。
 
 

各種データプラットフォームの活用

  
インフラDX化を導入、定着、そして実現させるためには、デジタル化を通じて取得できたデータをどのように扱うかが重要になります。
  
【取り組み事例】
  
・ 3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化の実施(PLATEAU)
・ 関係府省等が保有するさまざまな海洋情報(海しる)
・ 流域に関する様々なデジタルデータの管理の省人化、高度化(流域治水インテリジェンス)
・ 地震や風水害などの自然災害情報の取得・表示(DiMAPS)
・ 道路に関連するデータによる道路調査・工事・維持管理などの効率化(xROAD)
・ 国及び港湾管理者による適切なアセットマネジメントに資する情報プラットフォームの整備(CYBER PORT)
・ 情報交流、ツールの入手、 事例共有、人材育成等を支援(都市交通調査プラットフォーム)
  
各現場において最適な方法でデータを活かせるよう、国土交通省が保有するデータや各種プラットフォームを一元化し、利便性を向上させる取り組みを行っています。
 
 

3Dデータ・デジタル空間の活用

  
新しいインフラ構築の空間として、3Dデータやデジタル空間の利用を実現する取り組みも行われています。
  
【取り組み事例】
 
・ 建築・都市のDX
・ BIM/CIMの適用
・ Virtual Tourism
・ 3Dプリンタ
・ メタバース
 
BIM/CIMを活用することで計画や調査・設計の段階から三次元管理できるため、一連の建設生産や管理を効率化・高度化できます。またメタバースやバーチャルツーリズムの活用では、空間をよりリアルに体感できるため、細かなニーズへの対応や理解を深めることが可能です。
 
 

インフラDXによる災害対応

  
インフラDXにより災害対応においてもスムーズに行えるようになります。地震大国である日本や異常気象が続く現在では、こうしたインフラDXによる災害対策は、国民が安心・安全に暮らすために重要な取り組みです。
  
【取り組み事例】
 
・ UAVやLiDAR等の技術による短時間かつ広範囲な調査
・ 衛星による土砂崩れの観測
・ 水面下の被災状況を把握する音響探査
・ 災害時のリモート査定
・ 空間を再現することによる被災状況の正確な把握
・ 自動・遠隔施工による復旧や支援
  
これまで被災の状況確認や復旧に時間と危険が伴っていましたが、インフラDXを推進させることで、危険な場所でも遠隔操作にて復旧工事ができたり、現場に直接行かなくても被災の状況を正確に捉えらるようになります。
  
こうしたことが迅速かつ正確にできれば、安全性を保ちながら早期復旧や適切な対応が可能になるでしょう。災害時の迅速な対応は、国民が安心して暮らすためにも必要不可欠です。

インフラDXの推進で目指すこと・将来像


 
インフラ分野のDXアクションプランには、20〜30年先の(約2040~2050 年頃)の将来を想定した長期的な視点で、実現を目指す将来の社会イメージが記載されています。
 
第5期国土交通省技術基本計画では、以下の6つの視点から、目指すべき将来像を作成しています。
 
1. 国土、防災・減災
2. 交通インフラ、人流・物流
3. くらし、まちづくり
4. 海洋
5. 建設現場
6. サイバー空間

   
  

出典:国土交通省|インフラ分野のDXアクションプラン2 コロナ後も加速化を続けるDX
   
具体的には以下の通りです。
    
1. 国土やインフラの保全・管理の自動化が進み、効率的な運営が行われる社会。また気象予測の高精度化やインフラ・建物の強靱化等が進み、自助・共助・公助により被害が最小化する社会
 
2. 多様化するライフスタイルに応じて様々な低炭素・脱炭素化されたモビリティが提供される。豊かさと環境保全が両立した社会
 
3. 歩行空間を中心に街がデザインされ、自動化が進んだ安全性・利便性を高めた社会。豊かで快適な生活空間が実現する社会
 
4. 自動化・最適化された物流倉庫。自動運航船などにより脱炭素化された国際物流網が実現する社会
 
5. 人手不足でも生産性・安全性が最大化できる。建設施工の自律化・遠隔化が実現する社会
 
6. 生活空間を構成するあらゆるデータをサイバー空間で連携できる。どこにいても多様なサービスを享受できる社会
 

まとめ

インフラ分野のDXは関わる産業の幅が広く規模が大きいため、各分野で進むDX施策とフォーマットを揃えながら進めていくことが課題です。インフラ分野のDX化が進めば、国民の生活は大きく変化し、便利でより豊かな暮らしができるようになると期待されています。
 
AKTが扱う製品は、GNSSやクラウドコンピューティング、センシングなど専門性の高いICT技術を軸とし、現場の生産性や安全性の向上、施工精度の向上や脱属人化など、インフラDXを推進できる製品を数多く取り揃えています。建設業や重厚長大産業、流通業やインフラ保全業など、幅広い現場に数多く携わってきた対応力や柔軟性を活かし、インフラ分野のDXにおいても引き続き寄与していきます。

関連記事

pagetop