AKT | アカサカテック|GPS/GNSSを活用した船舶・建設・情報化施工システム

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活用事例

GNSSを活用した徳之島でのサトウキビ畑 IoT

鹿児島大学との共同研究 『ハーベスタ情報システム』について

鹿児島県南西諸島で基幹作物となっているサトウキビ。徳之島では耕地面積の60%近くがサトウキビ畑といわれ、99%の農家がハーベスタ(収穫機)で刈取りを行っているそうです。
 
今回の記事では、GNSSを搭載したハーベスタでの収穫の様子、そして鹿児島大学との共同研究 『ハーベスタ情報システム』について紹介させて頂きます。

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徳之島のサトウキビ産業

サトウキビ畑の風景

鹿児島県南西諸島に位置する徳之島は、台風や強風の影響を受けやすい熱帯地方であり、作物にとって決して恵まれている環境とはいえません。しかしながら、基幹作物であるサトウキビは、気候的な相性が良く強風にも強い作物であるため島内全域で栽培されています。

サトウキビは春から夏にかけて植付を行い、12月~3月頃にかけて収穫されます。今回視察させて頂いた2月中旬は、まさに収穫期真っ只中であり、島のいたるところでハーベスタが稼働していました。
    

  • 製糖工場搬入
  • 製糖工場運搬

収穫されたサトウキビは、時間が経過すると酸化が進み品質が低下することから、なるべく早い段階で製糖工場に送られ加工が進められます。

今回見学をさせて頂いた『南西糖業株式会社 徳和瀬工場』では、毎日約1,000tものサトウキビが運ばれてくるそうです。圧搾→洗浄→濃縮→結晶→分離の工程を経て、1日に約125tの原料糖(上白糖・グラニュー糖・三温糖など『精製糖』の原料)が生産されています。
  
南西糖業株式会社 [外部リンク]

収穫の様子

ハーベスタでの収穫の様子

徳之島では、サトウキビ農家の99%が収穫時にハーベスタを利用しています。これは、背が高く竹のように堅いサトウキビの茎を手狩りし、刈ったキビを担いで運び出すのが大変な重労働になるからです。
  
とはいえ、全ての農家がハーベスタを持つには多大なコストがかかり、刈り取ったものを出荷しなければ収益が得られないため、ハーベスタをもっている収穫業者に、刈取りから製糖工場への出荷までを委託するケースが一般的です。
   
   
ハーベスタでの収穫
  
ハーベスタを用いた収穫作業では、刈取りを行いながら殻と茎とを分別し、茎をカットし袋詰めするところまで全て機械で行います。ハーベスタを導入することで、一日の収穫量は手狩りの10倍以上になるといわれています。

ハーベスタ情報システム 研究の背景

ハーベスタでの収穫の様子
   
島内全域、大小さまざまな畑で栽培されているサトウキビの収穫において、「いまハーベスタがどこにいるか、稼働しているか」など収穫状況を管理したいというニーズがありました。

またヒアリングを続けるなかで、サトウキビの生育ムラを解消するために行う『圃場の近平作業』(均一で平らに農地を整える)が重要であることを知ります。
   
   
均平作業
  
従来は、目視による確認もしくは技術者による水準測量を行い、畑の起伏を把握していました。水準測量は高い精度で測量できますが、専用の機器と高度な資格を有した技術者が必要な上に、測量作業に多大な時間とコストを要してしまう欠点がありました。
     
  

    
cm級精度で位置情報を取得できるRTK測位を活用することで、リアルタイムでの収穫状況(ハーベスタの稼働有無、現在位置)の管理が可能になります。また、圃場面の高さ情報を取得し三次元の高低差マップを作成することで、圃場面の起伏が把握しやすくなります。
     

BLOG: RTK-GNSSとは?

システムについて

システム構成イメージ
   
GNSS補正データを配信するために基準局を準備、GNSS補正情報配信サービス『RINQ』を通じて観測局へ補正データを配信します。
  
GNSS受信機を搭載したハーベスタ(観測局)は、通常どおりの収穫作業をしながら常時RTK測位での計測を行います。取得した計測データはインターネット回線を通じてサーバへ自動送信され、送信データをもとに作成された三次元高低差マップはWebブラウザ上で確認できます。
     
  

   
基準局は、1周波RTK-GNSS受信タブレット端末『HDT280』を使用。GNSS補正情報配信サービス『RINQ』を通じて観測局へ補正データを配信します。基準局に関しては、設定後は特に操作する必要がありません。
   
  

  
ハーベスタに設置したIoTユニット(1周波 RTK-GNSS受信機『RTF300』)は、一日の始まりと終わりにスイッチのオンオフを行うだけでよく、オペレータの手を煩わせることなく人為的なミスも起こりづらいのが特長です。
   
  
画面イメージ
  
管理者はWebブラウザにアクセスすることで、現在の稼働状況、過去の収穫状況の確認、取得した高さデータの三次元マップを確認できます。三次元マップは拡大縮小回転などの操作ができるため、起伏の把握がしやすい仕様となっています。
    
   
スマートフォンで確認
         
スマートフォンで簡単に操作できるため、現地での均平作業時に高低差マップで状況を確認したり、現地にいない場合でも、すぐに輸送車や給油車へ目的地を正確に共有できます。
   

共同研究 インタビュー

鹿児島大学 准教授  熊澤 典良 博士
 
鹿児島大学 准教授 熊澤典良 博士に、共同研究に関するインタビューをさせて頂きました。
  
  
Q:研究の進捗についてお聞かせください
「さとうきびを収穫するための大型の機械(ハーベスター)に RTF300 を取り付け、ハーベスターの正確な位置情報等を取得する。開発したハーベスター位置情報システムに使用していたGPSセンサーでは難しかった点をRTK測位で解決するとともに、センチメートル級測位ならではの新たな機能を開発中である。」
    
Q:製品を利用してみて感じたことなどあればお聞かせください
「デザイン、重さ共に丁度良い。RTF300を(何かにしっかりと)取り付けるアタッチメントがあると良いと感じた。」
    
Q:今後思い描いていることなどあればお聞かせください
「視力障がい者が安全かつ安心に移動でき、気軽にジョギング等の運動が出来るようになることを目指している。」
    
Q:今後アカサカテックに期待することなどあればお聞かせください
「これまで提供されてきた様々な機器は驚きとしか言いようがありません。つぎの驚きを期待しています。」
 
         
弊社アカサカテックとの共同研究がスタートして二年。今後、多くの地域で実用化されることを心待ちにしています。この度は、貴重なお時間をありがとうございました。
  
(取材・撮影 2020.11 ~ 2022.02)
      
  

    
NEWS:『電波技術協会報FORN』にて鹿児島大学との共同研究が紹介されました)
     

鹿児島大学 熊澤研究室 [外部リンク]

紹介動画

 
GNSSを活用した徳之島でのサトウキビ畑 IoTについて、3分ほどにまとめた紹介動画を作成しましたので、是非ご覧ください。
 

今回使用した主な製品

製品紹介

RTF300 1周波 RTK-GNSS受信機
RTF300は、センチメートル級精度の1周波GNSS受信機です。ICT土工やi-Constructionにおける重機施工管理での利用はもちろん、今までセンチメートル級の位置情報を必要としていても、高額で普及が進んでいなかったエンタープライズ分野への利用を推進します。

 
HDT280 1周波RTK-GNSS受信タブレット端末
HDT280は、AndroidOSを搭載した堅牢型・多機能端末。タッチパネルを搭載し、直感的な操作性を実現します。4GBの大容量メモリを実装し、SDカードをデュアル搭載、様々な使用方法に対応できます。

 
RINQ GNSS補正情報配信サービス
RINQ / RTCM Internet Neo Query(リンク)は、HDT280向けのクラウド型GNSS補正情報配信サービスです。HDT280をGNSS補正情報の配信ステーションとして利用でき、移動局側のHDT280は補正情報を使って高精度な1周波RTK測位が可能になります。

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