制度・補助金
スマート農業補助金の対象は?農林水産省が支援する補助事業【令和6年】
「スマート農業を試してみたい」「導入したいがコスト負担が厳しい」という農業関係者に朗報です。農林水産省はスマート農業の普及を後押ししており、そのための補助金や税制特例を多数設けています。
この記事では、スマート農業関連の補助金と税制特例について詳しく解説します。
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目次
国・自治体が支援!スマート農業の補助金とは
スマート農業とは、IoTやAI、ロボット技術などの先端技術を農業に活用し、省力化やコスト削減、環境保全を実現する新たな農業のことです。農業における人手不足や高齢化といった課題解決が期待されています。
スマート農業は農林水産省が推進しており、後述するさまざまな補助金を通じて普及を後押ししています。こうした補助金は、農業関係者がスマート農業に関する技術を導入する際にかかるコストを軽減することを主に目的としています。
BLOG:スマート農業とは?
メリット・デメリットや企業の導入事例・課題を解説
補助金の目的
スマート農業の補助金には、主に以下のような目的があります。
まず、農業の生産性向上と省力化を促進することです。
2025年から超高齢社会に突入する国内において、限られた人員でも効率よく作業を進めることが期待されています。
次に、若者や新規就農者の参入を促すことです。
3K(キツい・汚い・危険)のようなイメージを抱かれがちだった農業を、先端技術の活用や新しいアイデアによって刷新します。
農業の競争力強化を図ることも目的の一つです。
スマート農業で農産物の品質アップや安定生産を実現します。
補助金の申請方法
補助金の申請方法は以下のフローで行います。
① 農林水産省のホームページから公募要領を確認する
② 申請書類を作成する
③ 必要に応じて各補助金の問い合わせ先に相談・確認を行う
④ 申請書類を提出し、審査結果を待つ
まず、農林水産省のホームページで最新の公募情報をチェックし、
詳しい要件や提出書類を把握します。
次に、事業計画や必要書類をミスなく作成します。
不明点がある場合は、補助金ごとの問い合わせ先に確認してみるといいでしょう。
書類作成後は、期限内に正確に提出します。
その後、審査結果を待ち、採択されれば事業を開始できます。
【令和6年度】スマート農業補助金の種類と内容
令和6年10月時点で公募が行われているスマート農業補助金は、下記の種類があります。
参考:農林水産省|農業支援サービス関連施策パンフレット(Ver.5.0)
各補助金の特徴や条件について紹介します。
スタートアップへの総合的支援
農林水産・食品分野で新たな技術開発・事業化を目指すスタートアップを対象に、実行可能性調査から試作品の作成、社会実証までの取り組みを切れ目なく支援する制度です。
【条件】
・ 農林水産・食品分野で新たな技術開発・事業化を目指すスタートアップ
(原則設立15年以内)等
農林水産・食品分野において革新的なアイデアや技術を持つスタートアップが、アイデアの実現可能性の検証から試作品開発、実証実験まで一貫して支援を受けられるため、新規事業の立ち上げや事業成長に役立てられます。
農業支援サービス事業育成対策
農業支援サービス事業体の新規参入・既存事業者による新たなサービス事業の育成・普及を加速化するため、新規事業立ち上げ当初のビジネス確立のための取り組みを支援する制度です。
【条件】
・ 農業支援サービスを新たに実施すること(新サービス開始、新たな地域への展開等)
・ 以下の成果目標のいずれかを設定すること
① 事業実施主体の提供するサービスを活用する経営体数
② 事業実施主体の提供するサービスを活用する農地面積
③ 事業実施主体の提供するサービスの売上げ
新たな農業支援サービスを立ち上げる際の初期フェーズの取り組みを支援します。ニーズ調査やサービスの試行・改良、専門人材の育成などに取り組みたい事業者におすすめです。
強い農業づくり総合支援交付金
農業支援サービス事業体の新規参入や既存事業者による新たな農業支援サービス事業の提供に必要な、農薬散布用のドローンなど、農業用機械などのリース導入・取得を支援する制度です。
【条件】
・ 農業支援サービスを新たに実施すること(新サービス開始、新たな地域への展開等)
・ 以下の成果目標のいずれかを設定すること
① 事業実施主体の提供するサービスを活用する経営体数
② 事業実施主体の提供するサービスを活用する農地面積
③ 事業実施主体の提供するサービスの売上げ
農業支援サービス事業に必要な農業用機械などの導入コスト(本体価格の1/2以内)を軽減できます。新規参入者や新たなサービスを開始する既存事業者で、高額な農業機械の導入を検討している事業者におすすめです。
産地生産基盤パワーアップ事業
農業支援サービス事業体が、産地と一体となって収益力強化に計画的に取り組む場合、計画の実現に必要な農業用機などのリース導入等を支援する制度です。
【条件】
・ 地域農業再生協議会等が作成する産地パワーアップ計画に参加する取組主体(農業者、農業者団体、民間事業者等)
・ 産地パワーアップ計画に取組主体として位置付けられた農業支援サービスを営む民間事業者(中小企業)や農業者の組織する団体等
※令和2年補正より、産地パワーアップ計画の成果目標に「農業支援サービス事業体の利用割合の10%以上の増加かつ50%以上とすること」を追加
産地全体の収益力強化を目指して、農業用機械などを導入する際に支援を受けられます。地域の農業者と連携して生産性向上に貢献したい農業支援サービス事業者におすすめです。
農業支援サービス事業緊急拡大支援対策
農業支援サービス事業緊急拡大支援対策は以下の2種類の支援に分かれます。
ー 農業支援サービス事業体ビジネス確立支援
新規のサービス事業体の育成に加え、新たに他産地への事業展開を行うサービス事業体のニーズ調査、デモ実演に必要な機械・システムの改修、専門人材の育成などの取り組みを支援する制度です。
【条件】
・ ビジネス確立支援主体が制定する業務方法書により審査・採択された農業支援サービス事業体
農業支援サービスの試行・改良に関わる人件費、農業支援サービスに必要な自社制作機械など原材料費といった取り組みに対して支援を受けられます。新規サービスの立ち上げや他産地への展開を計画している事業者におすすめです。
ー スマート農業機械等導入支援
農業支援サービス事業の提供に必要なスマート農業機械などの導入の取り組みのほか、農業支援サービスの広域展開に必要な取り組み、機械導入に伴い必要となる技術向上などの取り組みを支援する制度です。
【条件】
・ 農業支援サービス事業体であること
・ 提供するサービスの利用者数に係る成果目標を設定し達成すること
スマート農業機械の導入や広域展開、技術向上に取り組む農業支援サービス事業体を支援します。最新のスマート農業機械におけるサービスの拡大や効率化を図りたい事業者、広域でのサービス提供を目指す事業者におすすめです。
雇用就農資金
49歳以下の就農希望者を新たに雇用して、農業に必要な技術・経営ノウハウなどの実践的な研修を行う農業サービス事業体を支援する制度です。
【条件】
以下のすべてを満たす農業サービス事業体
・ 概ね年間を通じて農業を営む事業体であること
・ 新規就農者を正社員として雇用し、支援開始時点での就業期間が4か月以上12か月未満であること
・ 労働保険に加入し、就業規則を整備していること
・ 農業の「働き方改革」の実行計画を作成し、従業員と共有すること
・ 働きやすい職場環境整備に既に取り組んでいる、または新たに取り組むこと
・ 研修内容等を就農に関するポータルサイトに掲載していること など
新規就農者の雇用と育成にかかる費用の一部を支援します。農業人材の確保と育成を行っている農業サービス事業体におすすめです。若手人材の採用・育成を通じて事業拡大を目指す事業者に適しているでしょう。
農業労働力確保支援事業
農業現場における労働力不足を解消するため、産地内における労働力確保を推進するための取り組みや、繁閑期の異なる他産地・他産業との連携による労働力確保の取り組みを支援する制度です。
【条件】
以下のすべてを満たす団体(都道府県、市町村、農協、農業法人等)
・ 事業の事務手続きを適正かつ効率的に行うため、代表者、意思決定の方法、事務・会計の処理方法、その責任者、財務管理の方法等を明確にした運営規約が定められている団体であること
・ 本事業を行う意思及び具体的計画を有し、かつ、事業を的確に実施できる能力を有する団体であること
・ 農業の労働力確保に関する知見を有していること
産地内や他産地・他産業との連携による労働力確保の取り組みを支援します。農繁期の労働力確保に課題を抱える産地や農業法人におすすめです。
ディープテック・スタートアップ支援事業
革新的な技術の事業化・社会実装を目指して研究開発に取り組むディープテック・スタートアップに対して、初期的な研究開発から量産化技術の実証までを支援する制度です。
【条件】
以下のすべての要件を満たすディープテック・スタートアップ
・ 経済社会課題の解決を志向している会社であって、その有する技術が課題の解決に資する者
・ 革新的な技術の事業化及び社会実装を目指している者
・ 創業から長期間経過していない者であって、VC等の資金を活用しながら、大きく事業の成長を図ろうとする者
・ 事業成長のために研究開発投資を積極的に行っている者
農業分野での革新的な技術開発に取り組む、創業間もないスタートアップにおすすめです。大規模(最大30億円)かつ長期的な支援(最長6年間)を必要とする事業者に適しています。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
中小企業・小規模事業者などが革新的サービス開発・試作品開発や生産プロセスの改善などを行うための設備投資に対する支援を行う制度です。
【条件】
・ 3~5年の事業計画を策定及び実施する中小企業等
・ 付加価値額が+3%以上/年
・ 給与支給総額が+1.5%以上/年
・ 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上
新しい農業支援サービスの開発や既存サービスの生産性向上を目指す中小企業・小規模事業者におすすめです。補助上限額は最大2,000万円です。
成長型中小企業等研究開発支援事業
中小企業者などが大学・公設試などの研究機関などと連携して行う、ものづくり基盤技術及びIoT、AIといった先端技術を活用した高度なサービスに関する研究開発や試作品開発などの取り組みに対して、最大3年間の支援を行う制度です。
【条件】
・ 中小企業者等が、大学・公設試等の研究機関等と連携して研究開発等を行う事業
・ 研究開発が「中小企業の特定ものづくり基盤技術及びサービスの高度化等に関する指針」に則るものであること
大学などと連携して革新的な農業支援サービスの開発を目指す中小企業におすすめです。高度な技術開発により競争力強化を図りたい事業者に適しています。
畜産・酪農収益力強化整備等特別対策事業
畜産クラスター計画を策定した地域において、畜産農家などが行う収益性向上など、生産基盤の維持・強化に必要な施設整備や機械導入などを支援する制度です。
【条件】
・ 畜産クラスター計画に位置付けられた中心的な経営体(畜産農家又は飼料生産組織)であること
成果目標の例(中小規模経営等が施設整備事業に取り組む場合)
▶ 生産コストの削減(10%以上[事業終了後5年以内まで])
▶ 販売額の増加(10%以上[事業終了後5年以内まで])
畜産分野における施設整備や機械導入を支援します。畜産クラスター計画に参加し、地域の畜産農家などと連携して収益性向上を目指す飼料生産組織におすすめです。
飼料自給率向上緊急対策
飼料自給率向上緊急対策は以下の2種類の支援に分かれます。
ー 飼料生産組織の規模拡大等支援
飼料生産組織の規模拡大や省力化に必要な機械の導入や簡易倉庫の設置、畜産農家などとの長期契約に基づく安定的な国産飼料の供給に対する取り組みなどを支援する制度です。
【条件】
・ 飼料生産組織(農業法人、農業者団体、公社、農業関連企業等)
・ 飼料生産組織の規模拡大支援
▶ 運営強化方針の作成、地方公共団体等への事前相談
▶ 飼料※の生産・販売、作業受託の合計売上高の5%以上増加
又は 導入機械での作業拡大面積が北海道:20ha以上 都府県:10ha以上等
又は 労働投入量(労働時間)の5%以上削減 又は 労働生産性を5%以上向上
※対象となる飼料:稲わらを含む各種粗飼料、濃厚飼料(子実用とうもろこし、大麦、大豆)
・ 安定的な国産飼料の供給支援
▶ 畜産農家等と5年以上の長期供給契約・作業受託契約を結び、飼料※の収穫作業等を行うこと
▶ 飼料生産延べ面積(2作目も含む)を10%以上拡大等
▶ 拡大する作付地の土壌分析と生産する飼料の分析の実施
農業に欠かせない飼料生産組織の規模拡大や効率化をサポートします。飼料生産を効率化したい農業法人や、畜産農家と連携して国産飼料の安定供給を目指す事業者におすすめです。
ー 高品質TMR供給支援対策
TMRの品質改善計画を策定したTMRセンターが、その計画に基づき行うバンカーサイロ補改修の取り組みなどを支援する制度です。
【条件】
・ TMRセンターであること
※バンカーサイロの床面等の補改修を実施する場合、国の補助事業により整備したバンカーサイロであって処分制
限期間内のものは助成対象外。
TRMセンターとは、混合飼料を調合する施設のことです。混合飼料の製造・供給を行うTRMセンターで、品質向上を通じて競争力強化を図りたい事業者におすすめです。
飼料増産・安定供給対策
飼料生産組織のオペレーター確保に向けた募集活動や、大型特殊などの免許や技術資格の取得、人材育成のための研修を支援する制度です。
【条件】
・ 以下の要件を満たす飼料生産作業を行う組織(農業法人、農業関連企業等)
(1)原則として労働保険、厚生年金保険、健康保険に加入させること
(2)常時10人以上の従業員がいる場合は、就業規則を定めていること
(3)国による他の人件費、雇用、研修、免許等取得に関する助成を重複受給しないこと など
・ 以下の要件を満たす飼料生産組織の採用者・従業員
(1)正社員として3カ月以上雇用されること
(2)主として飼料の生産に従事すること
(3)研修の場合、採用から1年未満の者
(4)免許・資格取得の場合、取得後3年以上飼料生産作業に従事すること など
飼料生産を行う農業法人などで、オペレーターの確保や技術向上に課題を抱える事業者におすすめです。人材強化を通じて事業拡大を目指す事業者にも適しています。
【令和6年度】スマート農業税制特例の種類と内容
スマート農業の導入にあたって、前述の補助金のほかに「税制特例」が設けられています。
スマート農業に関わる税制特例として以下の3つを紹介します。
参考:農林水産省|農業支援サービス関連施策パンフレット(Ver.5.0)
中小企業経営強化税制
中小企業等経営強化法に基づき、経営力向上計画の認定を受けた事業者が、その計画に従って一定の設備投資を行った場合、税制優遇措置を受けられる制度です。
【条件】
・ 経営力向上計画の認定を受けた特定事業者等であり、青色申告書を提出する中小企業者等であること
・ 対象設備が、生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備(生産性向上設備)、投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備(収益力強化設備)、遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする設備(デジタル化設備)、又は、修正ROA又は有形固定資産回転率が一定以上上昇する設備(経営資源集約化設備)であること
※対象設備:機械装置(160 万円以上)、ソフトウェア(70 万円以上)、器具備品・工具(30 万円以上)、建物附属設備(60 万円以上)
スマート農業機器などの導入を通じて経営力向上を目指す中小企業におすすめです。
中小企業投資促進税制
中小企業者などが特定の機械装置などを導入した場合に、税制上の優遇措置を受けられる制度です。
【条件】
・ 青色申告書を提出する中小企業者等であること
※機械装置(160万円以上)、測定工具・検査工具(120万円以上)、 ソフトウェア(70万円以上)、普通貨物自動車(車両総重量3.5t以上)、 内航船舶(取得価額の75%が対象)
必要な機械装置やソフトウェアの導入を検討している中小企業者におすすめです。事業拡大や効率化のための投資を計画している場合に活用しましょう。
中小企業技術基盤強化税制
中小企業者などが行う研究開発活動に対して、その試験研究費の一定割合を法人税額から控除できる制度です。
【条件】
・ 青色申告書を提出する中小企業者など
新たな農業支援サービスの開発や既存サービスの改良のために、研究開発に取り組む中小企業者におすすめです。
スマート農業補助金を利用する際の注意点
スマート農業の補助金や税制特例を利用する際は、以下の点に注意が必要です。
申請書類には正確なデータを記載し、虚偽の記載がないよう細心の注意を払いましょう。また、プロジェクトの狙いや目標を分かりやすく記入することが重要です。
公募期間や申請〆切日をこまめに確認し、期限に余裕をもって準備を進めることが大切です。補助金によっては、事業計画や成果目標の設定が求められるため、実現できる具体的なプランを立てましょう。
さらに、補助金交付後の報告義務や使途制限にも注意しなければなりません。不明点がある場合は、各制度の問い合わせ先に確認することをおすすめします。
農林水産省|農業支援サービス関係情報
補助金活用でAKTのICT機器を導入
AKTでは、スマート農業に活用できるICT機器を多数提供しています。例えば、GNSSによる高精度な位置測位システムや、ミリ波レーダー・AIカメラを活用したセンシング機器などがあります。こうしたAKT製品を導入する際にも補助金を活用できます。(※補助金の要件変更や被支援者の状況によっては対象外となる可能性もあります。詳しくは各制度の問い合わせ先でご確認ください)
BLOG:GNSSを活用した徳之島でのサトウキビ畑 IoT
例えば「農業支援サービス事業緊急拡大支援対策(スマート農業機械等導入支援)」は、スマート農業機械などの導入を支援する制度で、AKT製品の導入に適しています。農業支援サービス事業の提供に必要なスマート農業機械等の購入・リース導入に対して、補助率1/2以内(上限額は導入タイプにより異なります)の支援が受けられます。
また、「強い農業づくり総合支援交付金(農業支援サービス事業支援タイプ)」も、AKT製品のような先進的な農業用機械などの導入に活用できます。農業用機械などのリース導入・取得に対して、本体価格の1/2以内の支援が受けられます。
スマート農業技術の導入をお考えの際は、これらの補助金の活用をご検討ください。
まとめ
今回は、スマート農業推進のための補助金や税制特例を紹介しました。
こうした支援を活用することで、スマート農業に必要な製品の導入コストを軽減できます。
AKTは、スマート農業実現に欠かせないGNSSによる高精度位置測位システム、ミリ波レーダー・AIカメラを活用したセンシングなど、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた自社製品を多数提供しています。また、OEM製造やソフトウェア開発などにおいても実績がございます。
お困りごとなどございましたら、是非お気軽にご相談ください。