AKT | アカサカテック|GPS/GNSSを活用した船舶・建設・情報化施工システム

BLOG

基礎知識

Ntripとは?電子基準点の違いや高精度GNSS測位サービスについて解説

Ntirpとは、インターネット回線を通じてGNSSの補正データを配信する通信方式のことですが、具体的にどういったものなのでしょうか。
 
電子基準点を用いるネットワーク型RTK-GNSS(VRS方式)ほか、ドコモやソフトバンク(イチミル)など、近年普及し始めている高精度GNSS測位サービスについて紹介します。

  • 建設業向け
  • メーカー向け
  • インフラ保全業向け

GNSS(全球測位衛星システム)とは

GNSSイメージ
  
GNSS(全球測位衛星システム)とは、衛星を利用した測位システムの総称です。
  
● 米国のGPS(ジーピーエス)
● 日本のQZSS(みちびき)
● ロシアのGLONASS(グロナス)
● 中国のBeiDou(ベイドゥ)
● EUのGalileo(ガリレオ) など
   
GPS単体での場合と比較し、GNSSを活用することで測位できる確率が高くなります。また、RTK測位という方法を用いることで、測位誤差を数cmに抑えることができ、誤差数mだった従来の計測方法と比べ、高精度な測位を実現できます。
   

RTK測位

   
RTK測位には、主に「RTK-GNSS」と「ネットワーク型RTK-GNSS(VRS方式)」があり、デジタル無線やインターネット回線を用いて高精度測位を実現します。 
 
ネットワーク型RTK-GNSS(VRS方式)を行う場合は、国土地理院が全国1,300カ所に設置した、GNSS連続観測点「電子基準点」を活用します。
  

BLOG :RTK-GNSSとは?

GNSSの各種連続観測点の特徴

GNSS連続観測点は、国土地理院が展開する「電子基準点」のほか、「独自基準点」や「民間等電子基準点」があります。それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

電子基準点

 
前述の通り、電子基準点は国土地理院が全国1,300カ所に設置したGNSS連続観測点です。  
約20km間隔で設置されており、受信データの収集・解析は、茨城県つくば市にある国土地理院で行われています。日本全国さまざまな地域に設置されており、各種測量や地殻変動の観測などに役立てられています。
   

独自基準点

   
独自基準点とは、言葉の通り独自に設置したGNSS連続観測点のことです。
日本では、ソフトバンクが全国3,300ヵ所以上の独自基準点の設置を進めており、他にも民間団体が独自に設置しているケースがあります。
    
電子基準点との違いは、国ではなく民間団体が設置している独自の基準点という点です。より高密度に独自基準点が整備されることで、精度が必要なICT施工などで有用ですが、日本測量協会の認定サービスではないため、公共測量などにおいては認定されません。
   

民間等電子基準点

 
民間等電子基準点とは、令和元年10月に制定された「民間等電子基準点の性能基準及び登録要領」を満たしたGNSS連続観測点のことで、令和2年4月からは国土地理院による「民間等電子基準点の登録制度」の運用も開始されています。簡単にいうなれば、独自基準点のうち国土地理院が認定した基準点です。
   
民間等電子基準点は、GNSS連続観測点の設置者ごとに規格や準拠座標系が異なることによる混乱を防ぐため、独自で設置されたGNSS連続観測局の性能を評価し、級別に登録する制度として制定されました。等級によってデータ活用の範囲は異なりますが、農機の自動運転の利用増加に伴い設置件数が増加している背景があるようです。
  
参照:国土地理院 – 民間等電子基準点の活用推進への取組 [外部リンク]

Ntrip方式とは


   
Ntirp(The Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)方式とは、前述のとおり、インターネット回線を通じてGNSSの補正データを配信する通信方式のことです。Ntirp方式を用いたGNSS補正サービスとして、主に「VRSサービス」と「RRSサービス」があります。それぞれの違いをみていきましょう。
   

VRSサービス

  
VRSサービスとは、携帯電話経由で観測点周辺の電子基準点網から仮想基準局を設置し、補正データとして携帯電話やインターネット回線にデータを送信するサービスです。地殻変動補正によって、最も近い電子基準点成果に合った補正データを生成するため、スタティック測量との整合性が高い補正データを配信できます。
   

RRSサービス

  
RRSサービスとは、電子基準点とRTK-GNSS(基準点と観測点を同時に観測する測位方法)を行うサービスです。最寄りの電子基準点あるいは指定した電子基準点で取得したデータを、利用している携帯電話やインターネット回線に配信します。
  

RTK-GNSS測位にも用いられる

    
RTK-GNSS測位は、基準点と観測点という2つのポイントを同時に観測する測位方法です。基準点とは位置がわかっている実在の基準局を指し、観測点とは測りたいポイント(移動局)を指します。位相データの送受信は、デジタル無線やNtirp方式を用いて行います。
  
このようにNtrip方式とは、GNSS補正サービスそのものを指すものではなく、インターネットを介してGNSS補正データを配信するためのプロトコルを指すものです。

高精度GNSS測位サービスの例


     
大手通信キャリアのNTTドコモとソフトバンクは、令和元年にGNSSの高精度測位サービスをスタートさせました。これらはいずれも、インターネットの通信網を用いてGNSS補正データを配信するNtirp方式を用いたサービスです。
  
以下では、NTTドコモとソフトバンクが展開しているGNSSの高精度測位サービスを紹介します。

 

ドコモ IoT高精度GNSS位置情報サービス

  
ドコモのIoT高精度GNSS位置情報サービスは、誤差数cmの位置補正情報を提供するサービスです。国土地理院が提供する全国約1,300か所の「電子基準点」と「ドコモ独自固定局」を活用してリアルタイム観測データを取得します。
   
参照:ドコモ – 「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」とは [外部リンク] 
 

ソフトバンク 高精度測位サービス ichimill

  
ソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」は、誤差数cmの測位を可能にするサービスです。電子基準点は使用せず、全国に約3,300か所ある「ソフトバンク独自基準点」を使用してデータ通信を行います。
 
参照:ソフトバンク – 高精度測位サービス ichimill [外部リンク]

まとめ


   
Ntripとは、GNSS補正データを送受信するための通信方式です。
 
大手通信キャリアのNTTドコモやソフトバンクが高精度測位サービスを開始したことで、従来よりコストを抑えて高精度なRTK測位が実現できる現場も出てきました。しかし「電波が安定しない」「通信圏外である」など、現場の状況によっては、サービスの使い分けやデジタル無線等の利用も視野に入れる必要があります。また、電子基準点と独自基準点、民間等電子基準点によって、測位データの利用可能範囲が異なるため注意が必要です。
 
Ntirpを用いたRTK測位を検討している場合は、事前に現場環境や利用方法についてのリサーチを行い、現場に適した方法を比較検討してみてください。

関連記事

pagetop