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LiDAR SLAMとは?ハンディスキャナを活用した自己位置推定・積載量計測の仕組み

お掃除ロボットやスマートフォンなど身近な製品をはじめ、さまざまな場面で活用されている『SLAM』。近年では土木建設業における現場作業においても非常に大切な役割を担っており、『LiDAR』と呼ばれるセンシング技術と組み合わせた『LiDAR SLAM』技術に注目が集まっています。

この記事では、LiDAR SLAMとはどのような仕組みで、どのように活用することができるのか解説します。

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LiDAR SLAMとは

LiDAR SLAMとは、レーザー光を使って対象物をスキャン(=LiDAR)することで、空間がどのようになっているかを把握する(=SLAM)技術のことです。

レーザー光を物体に照射し、返ってくるまでの時間を計測することで物体との距離を測定することができます。またレーザーの照射角度から対象物の座標値(X・Y・Z)を算出できるため、立体的に対象物を捉えることが可能です。

SLAMとは

SLAM は S imultaneous L ocalization A nd M apping の頭文字をとった略語で、日本語では「自己位置推定同時地図作成」と訳されます。簡単にいえば、機械やロボットが「自身がどこにいるのか、周辺がどのようになっているのか」などの空間を把握できる技術です。
 
例えば、ルンバなどのお掃除ロボットを思い浮かべて頂くとわかりやすいでしょう。
 
お掃除ロボットは、SLAM技術を用いて、自動運転しつつ周囲の障害物を認識・回避し、掃除するというタスクを遂行します。また、ファミレスなどで見かけるようになった配膳ロボットが、店内を歩くお客さんに衝突することなく目的の席まで運ぶことができるのも、SLAM技術によるものです。

LiDAR SLAMと他の種類の違い

SLAM技術はデータの測定方法によって、以下の3種類があります。SLAM技術を用いてどのように積載物を測定できるのかを知るためには、SLAMのデータ測定方法について学ぶと理解しやすいです。
 
【SLAMの測定方法による種類】
SLAMの測定方法による種類
    
 
先述のとおりLiDAR SLAMは、レーザー光を対象物に照射し光の跳ね返りの時間によって対象物の位置を計測します。光の角度によって立体的に捉えるため、細かな形状を把握でき遠距離での測距精度にも優れている点が特徴です。
 
Visual SLAMは、カメラからの画像を分析することで周囲の対象物を把握する方法です。映像上で見える対象物の特徴を点で捉え距離を計測します。カメラの角度や距離を変えることで映像の変化を捉え3D地図を作ることも可能です。ただし、暗い場所での測定だと対象物を認識しにくい点がデメリットです。
  
Depth(デプス)SLAMは、ToFセンサーやデプスカメラから取得した距離情報によって計測するSLAM技術です。暗所の環境でもSLAMを実行できます。ただし、屋外ではセンサーの光が届きにくくセンサーの光は20m程度しか届かないため、遠距離の対象物や規模の大きい対象物には不向きです。
 
このようにLiDAR SLAMは、VisualSLAMやDepthSLAMよりも精度が高く遠距離かつ360°対応できるため、屋外や暗い場所など幅広い現場で活用できる技術だといえるでしょう。

LiDAR SLAMは政府推奨の技術


  
LiDAR SLAMの普及に向けて、国土交通省国土地理院では「LiDAR SLAM技術を用いた公共測量マニュアル」を公表。これらのマニュアルに従って作業を行うことで、LiDAR SLAM技術を用いた機器を公共測量に使用することが可能です。マニュアルには以下の内容が規定されています。
  
・ レーザスキャナ(LiDAR SLAM技術)技術を用いたレーザスキャナを使用したオリジナルデータの作成方法と点検方法
・ オリジナルデータの編集手順
・ グラウンドデータ、グリッドデータ、等高線データ、数値地形図データの作成手順
  
出典:LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル 
  
また、政府が国をあげて取り組む宇宙開発などにも積極的に使われており、信頼性の高い技術といえます。

LiDAR SLAMの仕組み・原理

政府も推奨しているLiDAR SLAMですが、どのようにして対象物や空間を把握しているのか、仕組み・原理について解説します。
  
LiDAR SLAMでは対象物に光を照射し位置情報や周辺情報を点群データにして処理します。点群データはX軸・Y軸の2Dデータや、X軸・Y軸・Z軸の3Dデータなど対象物の特性に合わせて取得することが可能です。
  
これらのデータを計算・分析しながらまわりの空間を把握して行動を判断しますが、計算・分析方法は主に以下の2つです。
  
・ NTD アルゴリズム:点群の分布の平均や分散を計算しながらマッチングする方法
・ ICPアルゴリズム:2つの点群の組み合わせを決め、それらの距離が最小となるように計算する方法
  
どちらの計算・分析方法においても対象物の特徴を点群データとして取得するため、よりリアルに細部の形状まで捉えることが可能です。

LiDAR SLAMの特徴


  
LiDAR SLAMの主な特徴は以下になります。
  
【特徴】
・ 高精度な自己位置推定・地図作成が可能
・ 光を使わないセンサーのため暗闇であっても精度に影響しない
・ 360°立体的に対象物を捉えることができる
・ 従来のSLAMよりも遠距離で計測ができる
・ 屋内外日中夜問わず計測可能
  
Lidar SLAMは精度が高く暗闇や遠距離であっても計測精度に影響を受けないため、従来の計測方法ではうまくできなかった作業も効率的に進めることが可能です。正確な位置推定と行動の判断ができれば諸作業の自動化もスムーズに行え、業務効率化にもつながります。
  
また、そのほかのSLAM手法と比較して角度や距離の自由度が上がっているため、幅広い用途で活用できます。

LiDAR SLAMの課題・問題点


  
LiDAR SLAMを活用する際には、以下のような課題や問題点があることも理解しておきましょう。
  
【課題・問題点】
・ データ処理の負荷が大きい
・ 画像処理・点群処理・最適化の計算コストが高い
・ 位置推定の誤差が蓄積し、真値から大きく外れる
・ 位置推定が失敗し、地図上の位置を見失う
・ 障害物が少ないとうまく計測できない可能性がある
  
LiDAR SLAMは、障害物が少ない場所では点群データ自体が少ないため点群の組み合わせやマッチングが難しく、判断を誤ることがあります。また、位置の推定には多少の誤差が発生しこの誤差が積み重なることで位置の推定に失敗する可能性が否定できません。
  
このような状態が起こると地図データが崩れ自身では訂正できなくなってしまいます。一度データが崩れるとそれ以降の探索が難しくなる点が課題です。加えて、マッチング・組み合わせという作業の特性上、どうしても作動負荷が重く計測に時間がかかるケースがあります。

LiDAR SLAMの応用例


    
LiDAR SLAM技術は、さまざまな場面で活用されています。日常生活の身近な場面から工事現場や宇宙建設など大規模な国家プロジェクトまで活用範囲が広く、最先端の開発分野で活用される機会が増えています。
  
【主な応用例】
・ 自動運転
・ ドローンの走行
・ ロボットの移動
・ 建設・工事現場での測量
  
自動車運転やドローン走行・ロボットの移動の用途で共通する点は、自律制御システムが必要であることです。SLAMを活用することで、ロボットや機械が自身の現在位置や周辺がどうなっているかを把握し、行動を判断できるようになります。SLAMは、自家用車やバスなどの自動運転・工場や物流の現場の無人搬送車・サービスロボットなどで活用されており、現代の新しい技術に必要不可欠です。
  
また、建設現場や海洋工事などで、積載量を測定する際にもLidarSLAMは活用されています。

運搬船積載量計測システム「LiS㎥(キュビズム)」


  
AKTでは、運搬船積載量計測システム「LiS㎥(キュビズム)」を新たに開発しました。
  
このLiS㎥はガット船などの運搬船に積載した材料の体積を、LiDAR SLAMで計測した3次元群データとして体積計算プログラムに取り込み、船倉の位置をあわせることで積載量を算出できます。
  
従来、運搬船などの積載量の計測の際には、複数人が積載物の上に人が乗り調査するため危険が伴う作業でした。LiDAR SLAMを使えば、安全な位置から一人で積載物の周りを歩くだけで計測ができるため、安全を確保しつつ生産性の向上が実現できます。
  
また、計測結果の算出においても、計測した3次元点群データ(LASデータ)をUSBケーブルでPCに取り込み、必要箇所を入力するだけで積載量を素早く簡単に算出できます。
  

LiS㎥:製品詳細を見る

まとめ


      
LiDAR SLAM技術は身近な場面で活用されているだけでなく、業務効率化や安全対策としてさまざまな現場に導入されるケースが非常に増えています。シンプルで安価なものから高機能で高価なものまで、様々な製品が出回っています。またハンディスキャナの普及に伴い、ソフトウェアに対するニーズも高まっています。
  
LiDAR SLAM技術をどう業務に活用するか、是非一度導入の検討をしてみては如何でしょうか。
   

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