トレンド
国土交通データプラットフォームとは?各分野のデータベースと一元化の取り組みを解説
国土交通省は、『建設DX(デジタルトランスフォーメーション)』の実現に向けて、『ICT施工ステージ2』や『i-Construction2.0』など新たな施策を次々と提唱しています。その施策を推進する上で重要になるのが、各分野におけるデータベースの利活用、そしてプラットフォーム化です。
国土交通省が整備を進める『国土交通データプラットフォーム』をうまく活用できれば、インフラ分野のDX推進に役立つだけでなく、建設事業者がより働きやすくなり、競争力を高めてビジネスチャンスを得ることにもつながります。
今回は、国土交通データプラットフォームの重要性や各分野のデータベースについて、現状の課題と取り組みについて解説します。
- 建設業向け
- メーカー向け
- インフラ保全業向け
目次
国土交通データプラットフォームの重要性
国土交通省は、交通、河川、港湾、航空、都市開発など、多岐にわたる分野のデータベースを国土交通データプラットフォームというサイトに集約しています。国土交通データプラットフォームは、2020年4月に1.0版として一般公開され、2023年4月に大幅リニューアル、建設業界のデジタル化を推進するための基盤構築を進めています。
インフラ分野のDXを進めるためのアプローチとして、国土交通省はインフラの『作り方』『使い方』『データの活かし方』という3分野での取り組みを掲げています。この中の『データの活かし方』に大きく関わるのがデータプラットフォームです。
『作り方』では、データを活用してインフラ計画を高度化し、建設現場の生産性と安全性を向上させます。『使い方』では、デジタル技術を駆使して、インフラ利用申請のオンライン化や書類の簡素化などを進めます。
『データの活かし方』では、国土交通データプラットフォームを中心に国土のデジタルツイン化(サイバー空間で現実世界を再現すること)を進め、データをより分かりやすく、より使いやすくすることを目的としています。また、こうした取り組みで仕事の進め方や民間投資、技術開発が活発化する社会を実現します。
このように国土交通データプラットフォームは、今後の建設業界の発展に欠かせない存在といえるでしょう。
国土交通データプラットフォームに登録されているデータベース
国土交通省の『国土交通データプラットフォーム』には、2024年7月の時点で、以下分野のデータベースが登録されています。
・ 国土分野
・ 道路分野
・ 交通分野
・ 河川・ダム・水資源分野
・ 港湾・海事分野
・ 災害・防災分野
・ 都市・まちづくり分野
・ 電子成果品分野
・ その他
国土分野
国土分野のデータベースには、主に次のものが挙げられます。
・ 国土地盤情報データベース
・ 国土数値情報
国土分野のデータベースには、全国の地盤情報を集約し、地質データを提供する『国土地盤情報データベース』や、地形、土地利用、公共施設など国土に関する情報をGISデータとして整備した『国土数値情報』があります。
道路分野
道路分野のデータベースには、主に次のものが挙げられます。
・ 高速道路会社の工事発注図面データ
・ 工事実績情報(コリンズデータ)
・ 全国道路施設点検データベース
・ 全国道路・街路交通情勢調査一般交通量調査(道路交通センサス)
道路分野のデータベースには、高速道路の工事発注図面データを集約したものや、工事実績を蓄積する『コリンズデータ』、道路施設の点検データを集めた『全国道路施設点検データベース』、道路交通の状況を調査する『道路交通センサス』などがあり、工事の計画や管理、交通量の分析に役立ちます。
交通分野
交通分野のデータベースには、主に次のものが挙げられます。
・ GTFSデータリポジトリ
・ 全国幹線旅客純流動調査
・ FF-Data(訪日外国人流動データ)
交通分野のデータベースには、バスなど公共交通機関の時刻表や運行経路などを提供する『GTFSデータリポジトリ』、旅客の移動パターンを5年に1度の頻度で調査している『全国幹線旅客純流動調査』、訪日外国人の移動データを収集する『FF-Data』があります。
河川・ダム・水資源分野
河川・ダム・水資源分野のデータベースには、主に次のものが挙げられます。
・ ダム便覧
・ 水文水質データベース
河川・ダム・水資源分野のデータベースには、ダムの情報を集めた『ダム便覧』や、河川や湖沼の水質データ(雨量・水位・流量・底質・積雪深など)を提供する『水文水質データベース』があります。水資源の管理や環境保護などに役立てられます。
港湾・海事分野
港湾・海事分野のデータベースには、主に次のものが挙げられます。
・ 洋状況表示システム(海しる)
港湾・海事分野のデータベースには、島名、海上保安部署等、港湾、漁港、灯台などの情報を表示する『海洋状況表示システム(海しる)』があります。海上保安庁が運営しています。
災害・防災分野
災害・防災分野のデータベースには、主に次のものが挙げられます。
・ 自然災害伝承碑
・ 統合災害情報システム(DiMAPS)
・ SIP4D
災害・防災分野のデータベースには、自然災害に関するモニュメント・石碑をまとめた『自然災害伝承碑』、災害が起こった際に現場の情報を公表している『統合災害情報システム(DiMAPS)』、災害対応のデータを集めた『SIP4D』があります。これにより、防災対策や災害時の迅速な対応が可能になります。
都市・まちづくり分野
都市・まちづくり分野のデータベースには、主に次のものが挙げられます。
・ 都市3Dデータ(PLATEAU)
都市・まちづくり分野のデータベースには、都市の3Dデータを提供する『都市3Dデータ(PLATEAU)』があります。これにより、都市計画や災害対策のシミュレーションが容易になります。
電子成果品分野
電子成果品分野のデータベースには、主に次のものが挙げられます。
・ 地方公共団体の工事データ(My City Construction)
・ 電子納品保管管理システム
・ 東京都ICT活用工事データ
電子成果品分野のデータベースには、地方公共団体の工事データを集めた『My City Construction』、工事の電子成果品(工事・業務管理ファイル、IFCファイル、設計図面ファイル、3次元点群データなど)を保管・管理する『電子納品保管管理システム』、ICT施工技術を活用した工事データ(3D点群データなど)を集めた『東京都ICT活用工事データ』があります。
その他
その他、下記のデータベースが挙げられます。
・ 社会資本情報
・ サンプルデータ
・ 静岡県航空レーザ点群
その他のデータベースには、河川、砂防、ダム、港湾などの社会資本データを集めた『社会資本情報』、各データプラットフォームのショーケースや要素技術を提供する『サンプルデータ』、河川工事での測量業務に関する航空レーザデータを収集した『静岡県航空レーザ点群』があります。
国土交通データプラットフォーム一元化の取り組み
各分野のデータベースにおける課題は、それぞれが独自の形式やシステムで運用されており、データの共有や連携が難しく、情報の一貫性や整合性が保たれにくい点です。
各団体・各データベースごとにデータを管理するため、データの重複やファイル形式の不一致などが起こり、利用者(建設会社など)が求めているデータにたどり着けない場合もあるでしょう。また、データの更新やメンテナンスにおいても、労力やコストがかかるという問題点もあります。
こうした課題を解決するために、データ連携の強化を目指し、国土交通データプラットフォームによる一元化を進めています。プラットフォームによる一元化では、データを集約・統合し、情報の一貫性と整合性を確保することを目的としています。各分野のデータが連携しやすくなれば、利用者が求める情報をスピーディかつ正確に取得できるでしょう。
【データプラットフォームのメリット(建設事業者)】
・ 業務の効率化
・ コスト削減
・ プロジェクトの品質向上
・ 競争力の強化
多岐にわたるデータベースが一元化されているため、データ収集や確認の手間が省け、業務効率がアップし、人件費などのコストを削減できます。また、一貫性のあるデータを利用することで、プロジェクトの品質管理が高まり、競争力が強化され、新たなビジネスチャンスを獲得しやすくなるでしょう。
まとめ
国土交通データプラットフォームは、国土、道路、交通、河川・ダム・水資源、港湾・海事、災害・防災、都市・まちづくり、電子成果品など、さまざまな分野のデータベースが登録されており、データ検索のみならず、2次元・3次元データの重ね合わせや3次元モデルの表示などもサイト上で行えます。
プラットフォームを活用することで、業務の効率化や生産性向上、プロジェクトの品質向上による競争力の強化などのメリットが期待され、建設DXの推進に貢献すると考えられるでしょう。